配偶者控除の問題点などについて

こんにちは。
相談役・税理士の池田茂雄です。
今回は、今、話題になっております「配偶者控除の問題点」などについて、お話します。

(1)所得税の配偶者控除と103万円の壁

配偶者控除とは、例えば夫が会社員で妻がパートで働く世帯の場合、妻の給与年収が103万円以下であれば、夫の給与所得から配偶者控除として38万円が控除され、所得税が軽減されることとなる所得控除のことです。
このため、妻が年収103万円を超えないよう働く時間をおさえる傾向が強いことが指摘されております。年間給与収入金額の締め切り日が年末となっているため、11月とか12月になるとパート従業員の多い企業では人手不足が深刻な状態だと云われております。
軽減される所得税額は、夫の給与所得金額によって異なるが、所得税の税率は、「5%から45%」となっており、所得税額は最高171,000円(38万円×45%)軽減されます。
所得税のほか、住民税も課税されるため、それを合せた軽減税額はもっと大きるなります。妻の給与年収が、103万円を超えても、141万円までは段階的に控除額が減少していく制度となっていますが今回は省略します。

(2)2016年10月1日施行・社会保険 強制加入 106万円の壁

今年10月1日から、新しく、従業員501人以上の企業に対し、①「週20時間以上」、②「年収106万円以上」の条件に該当するパート従業員は、厚生年金と健康保険に加入し保険料を支払わなくてはならないこととなりました。パート従業員も老後、基礎年金に上乗せして厚生年金が受け取れるようにするためなのです。サラリーマンの妻で今年9月までは保険料負担がなかったパート従業員の中で、この条件に該当すれば保険料を支払う必要が生じることとなります。このため、負担を嫌がって労働時間や収入をおさえようとする人も出てくるのではないでしょうか。

(3)社会保険制度における130万円の壁

「前項(2)の106万円の壁」以外に、従来から社会保険制度には「130万円の壁」があるのです。これは、サラリーマンの妻がパートで働く場合、労働時間が、①週30時間以上で、②給与年収130万円以上ならば、妻は自分で厚生年金と健康保険に加入し自分で保険料を支払わなくてはならないこととなっています。130万円未満ならば、妻は「夫に扶養されている」とみなされるため、保険料を支払わなくてよいのです。厚生年金と健康保険の保険料は給与収入額により異なりますが、最低でも年間20数万円になるものと思われます。

(4)女性活躍社会の実現

安倍内閣の重要政策である「女性活躍」を促進する目玉として、「女性の就労を阻害する税制を見直すべきだ」と安倍首相は今年9月初めに関係者及び関係機関に指示していました。
そこで浮上したのが「配偶者控除を廃止」して、新しく「夫婦控除」をもうけるというものでした。この新しい「夫婦控除」では、妻の収入に関係なく、夫婦控除を認めるというものでした。この場合、税収の減少が大きるなるので、夫の収入に例えば1,000万円までなどと一定の限度をもうけ、それ以上の収入の場合には「夫婦控除」を認めないこととするなど、議論がなされました。ところが、今まで認められていた38万円の配偶者控除が廃止され、新しい「夫婦控除」では夫の収入に限度額がもうけられるとなると、今まで受けられていた恩恵が受けられなくなる人が出るなどの反対意見が続出した。そこで安倍首相は指示してから1ヶ月あまりで、この「配偶者控除の廃止(案)」を見送り「夫婦控除 (案)」も取下げし、今後、数年かけて議論すべきであるとの結論となった。
当面は、配偶者控除の摘要条件である収入限度額を今の103万円から、例えば、150万円程度にまで引き上げてはどうかとの意見が出るなどしているが、今後の動向に注目したいものである。
 

以上、給与収入と社会保険加入の要否などについて述べてきましたが、パートで働く女性にとっては大きな関心ごとであることに間違いはないと思います。

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