「消費税のインボイス制度」
こんにちは、相談役・税理士の池田茂雄です。
今回は、「消費税のインボイス制度」について述べてみます。
消費税は平成元年4月1日(1989年)にスタートした税で、以来35年が経過しました。

インボイス制度、一般消費者の皆さんにとってはあまり関心のない話なのですが、事業者の皆さんにとっては大変な関心事であり、事務負担も増えますし、手計算ではとても処理出来ません。 会員の皆さん、ほとんどの方が事業者ですので、すでによくご存じのことと思いますが、何故、こんな制度が出来たのかを、おさらいしてみたいと思います。
消費税は消費者が負担する税ですが、税務署に納付するのは商品を販売した事業者です。ただ、商品は事業者から事業者へ転々と流通して、やがて最終消費者に渡ります。その転々と流通する中での事業者たちは、それぞれが税務署へ消費税を申告納付することになっております。
事業者が納付する消費税は、販売の際に収受した消費税から、仕入れの際に支払った消費税や、諸経費支払い時に支払った消費税を控除した額を、消費税として税務署に納付することになります。
この、控除する消費税のことを、「仕入税額控除」と言いますが、この控除税額に問題があったのです。 消費者の皆さんが負担した消費税が、税務署に納付されないケースがありました。 このインボイス制度により、次のことが解決されました。
(1) 消費税は消費者が負担する税ですが税務署への納付は、前述のように商品を販売した事業者が販売時に収受した消費税から、仕入れ時に支払った消費税や諸経費支払い時に支払った消費税を控除した額を納付する税なのです。
国サイドでの徴税の手間などを考慮した結果、年間売上1.000千万円以下の小規模事業者については、商品を販売した際に収受した消費税を税務署に納付しなくても良い事になっていたのです。
年間売上1.000万円以下の消費税非課税事業者については、販売時に収受した消費税から仕入時などに支払った消費税を差し引いた額が益金になっていたのです。このことが、当初から問題になっていたのですが、これを解消するためのインボイス制度です。
(2) 商品は事業者から事業者へと流通し、やがて最終消費者に渡ります。これらの事業者は、消費税を税務署に納付することになりますが、その納税額を算出する際に控除する「仕入税額控除」に問題があったのです。
納税者が税務署に納付する消費税額は、売上時に収受し消費税額から仕入れ時なに支払った消費税額を控除した額なのです。
その際、年間売上1.000万円以下の事業者が収受した消費税については、税務署に納付されていないにもかかわらず、控除することが出来たのです。 二重の控除になっていたのです。これを解決するためのインボイス制度です。
今回のインボイス制度
昨年10月1日、インボイス制度がスタートしました。
従来は、支払った金額の中には全て消費税が含まれているものとみなして、仕入控除が出来ていました。
今回のインボイス制度では、消費税課税事業者としての登録制度が設けられ、「適格請求書発行事業者」として登録を申請して、登録番号の指定を受ける事となり、この登録を受けた事業者に支払った分のみが仕入控除の対象となります。
これらの事業者が発行する請求書及び領収書には、勿論、この登録番号、事業所名称、所在地、金額の表示が必要です。
年間売上1.000千万円以下の事業者については、この登録申請をしないで非課税事業者のままでいても問題はありません。売上時に消費税を収受する事もできますが、税務署に納付する必要はありません。ただ、登録番号がないレシートや領収書だと、支払った分が控除の対象とならないので、相手さんから敬遠される恐れがあります。 そのため、多くの小規模事業者が課税事業者の登録申請をしています。
街の小さな喫茶店やお店などでも、レシートに登録番号が有りますよね。確定申告で消費税の申告が今までの「1.8倍」になったことが、大きくニュースになりました。
今回の改正では、非課税事業者への影響が大変大きいと言うことで、次の特別経過置が設けられました。
◎今迄、納付していなかった非課税事業者が、いきなり課税事業者になると負担が大きくなるので、向う3年間は収受した消費税の20%を納付すればよいことになりました。
◎非課税事業者からの仕入れは控除の対象とならないと言う事で、敬遠されることが予想されますので、向う3年間は支払った消費税の80%が控除でき、更に向う3年間は50%控除出来ることになりました。
非課税事業者に対する大変な経過措置ですよね。
非課税事業者については取引の過程において、仕入れ控除が出来ないと言う事で、弱みに付け込み無理な値引き要求をする事などが考えられます。 そこで、公正取引委員会が動きだしていますが、ここでは省略します。 6年後に、やっと、今回の改正が全て動き出すこととなります。
カテゴリー:相談役 | trackback(0) | 2024年12月28日 11:43