「ふるさと納税」制度の概要

こんにちは。
相談役・税理士の池田茂雄です。

今回は、「ふるさと納税」制度の概要について述べてみます。

 この「ふるさと納税」制度とは、自分の出身地など応援したい自治体(市町村)に対して寄付をすることである。この寄付をすると寄付金額から2,000円を差し引いた額が、確定申告の際に所得金額から控除され、所得税と個人住民税が減額される仕組みとなっている制度である。
 この制度は、地方の活性化を目的に2008年(平成20年)に導入された制度であり、名称は「納税」となっているが、税法的には「寄付金」にあたる。任意の自治体に寄付をすることで、国に納める所得税と本人が住んでいる自治体に納める個人住民税が減額されることとなるが、自治体には寄付金が収入として入るため、都市から地方への税収移転を通して地方の活性化を図る制度として導入された。ところが、このふるさと納税制度に対し批判が高まっている。ふるさと納税のお礼にその地域の特産品を贈る自治体が多いなかで、寄付を集めようと過熱する自治体が、今後のことも考えて寄付に対するお礼のお返しとして、高価な品物や、なかには商品券など換金性の高い返礼品もあるなど不適切なケースが目に付くようになっている。このため、国サイドでは「趣旨に反するような返礼品は自粛するよう」注意を促しているが強制力はなく、自治体任せといった状況である。地域の行政サービスは、サービスを受ける住民が税金を負担するという受益者負担の原則があるが、この原則が崩れてしまうのではないかというリスクに直面している。
 ここで、寄付をすることにより減額される税金はいくらになるかについてふれてみます。前述の寄付金額から2,000円を差し引いた額が所得金額から控除されることとなるが、課税される税率は、所得税が最低5%から所得金額に応じて最高45%となっており、個人住民税は一律10%となっている。このため、各人の所得金額により減額される税額も異なることとなる。ただし、控除金額は各人の所得金額により上限があるため注意が必要である。
 2月28日付の読売夕刊によると、私の地元「堺市」では2015年度に受け取った寄付金収入は1,700万円だったが、他の自治体への寄付により、堺市に入ってくるはずだった個人住民税の減額となる控除額は4億7千万円となった。そのため、返礼品をそれまでの14種類から71種類に拡大充実し今後にそなえているとのことである。そのほか、自分の出身地でなくても任意の自治体に寄付できることとなっているため、制度上は可能な自分が居住している自治体への寄付を呼びかけたり、税収減への危機感から返礼品の新設や拡充など、つなぎ留めを図る自治体が現れるなど大きな波紋を呼んでいる。今後の動向に注目したい。

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