馬券購入による当り馬券の払戻金課税について

 こんにちは。所長の池田茂雄です。

 競馬の馬券購入により、高額の払戻金を手にした個人に対する申告漏れや、追徴課税問題がクローズアップされています。

 東京国税局管内の事例。会社員Aは年に1,500回以上、ネットで馬券を購入、2008年からの3年間に「約2億5千万円」の馬券を購入し、当り馬券により「約1億8千万円」の払戻金を受けていた。毎年の収支は赤字で、払戻金から購入費を差し引くと3年間で「約7千万円」のマイナスとなるにもかかわらず、「約1千2百万円」の申告漏れを指摘され「約550万円」を追徴課税された。これは、払戻金を受けた際の「当り馬券の購入費」しか必要経費として認められない「一時所得」と判定されたことによるものである。

 大阪国税局管内の事例。独自の競馬予想ソフトを駆使してネットで馬券を大量に購入していた個人に対する脱税事件。個人Bは、2007年からの3年間に「約28億7千万円」の馬券を購入し、当り馬券により「約30億円」の払戻金を受けていた。この払戻金「約30億円」から、馬券購入費「約28億7千万円」を差し引いた「約1億3千万円」の差益しかないのに、課税当局より「5億7千万円」を脱税したとして違反罪に問われたため個人Bが提訴していた。これは、外れ馬券購入費を「必要経費」として控除することが出来るか否かで争われた裁判であるが、一審の大阪地方裁判所は、今回の場合「外れ馬券購入費も経費に含めるべきである」としたため検察側が控訴していた。

 この場合、「一時所得」であれば経費とは認められないが、「雑所得」であれば経費として認められることとなる。検察側は、払戻金は偶然に左右される「一時所得」であり、控除できるのは直接経費に当たる馬券購入費のみであると主張していた。この度、大阪高等裁判所は、「営利目的の継続的行為」として「雑所得」であるとみなされる基準については、「回数や頻度、規模も当然考慮に入れるべきである」と指摘。この個人Bは、5年間にわたり週末の全レースを対象に機械的に賭けて利益を得ようとした実態を重視し、この払戻金は「雑所得」に当ると判断した。従って、脱税額は課税当局が指摘した「5億7千万円」ではなく「5千2百万円」と結論づけた。

 今回、政府与党内では、馬券の買い方によって外れ馬券の購入費が経費になったりならなかったりするという課税問題が見つかったことに注目し「検討しなければいけないテーマ」であるとしている。「宝くじ」のように購入時の税負担を増やすことにより、払戻金は非課税としたらとの案も浮上している。

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