経営者の個人保証に依存しない融資の促進へ

こんにちは。所長の池田茂雄です。

今回は、経営者の個人保証についてお話します。

 

1.「経営者保証に関するガイドライン」の公表

今回、「「経営者保証に関するガイドライン」が、「日本商工会議所・一般社団法人 全国銀行協会ガイドライン研究会」より公表されました。中小企業庁の調査によれば、中小企業の86パーセントが金融機関から融資を受ける際に、法人の借入金であるにもかかわらず「経営者の個人保証」を要請されているといわれています。金融機関による過度な経営者への個人保証要請が、新規の事業展開や設備投資など事業拡大に対する経営者の意欲を阻害しているという指摘が従来からありました。この個人保証は、経営者にとって大きな負担となっていることも事実です。しかしながら、融資する金融機関からすれば、債権保全という安全策も当然必要なことであります。

 政府が取り組む「成長戦略」では、「新事業の創出」や「再チャレンジへの投資」など中小企業の活力を引き出すべく諸施策が講じられているところであります。一度の失敗ですべてを失い、それまでのノウハウや経験が活かされないような現状の「経営者保証制度」を改める必要があるということで、今回、「経営者の保証に関するガイドライン」が策定公表され、平成26年2月1日より適用されております。本ガイドラインには、法的拘束力はありませんが、中小企業及び金融機関が共通の自主的に守るべき規則として、次のような効果が期待されております。

  1. 経営者保証のない融資を促進する。

  2. 既存の保証契約の適切な見直しをはかる。

  3. 保証債務の履行請求を限定的にする。

  4. 金融機関は、ガイドラインが求める経営者の対応が将来にわたって維持されると見込まれる場合は経営者に個人保証を求めない。

  5. やむを得ず経営者の個人保証が必要な場合でも、その理由や将来の見直しの可能性について説明する。又、この場合、保証金額を形式的に融資額と同額にしないことなどが求められている。

2.「経営者保証に関するガイドライン」とは

公表されたガイドラインは、10数ページに亘った内容となっておりますが、要約すると概要は次のとおりです。

  1. 「会社と経営者個人との関係を明確に区分・分離すること(業務・経理・資産所有等)」

    次のようなことが想定されます。

    ・事業用資産は、経営者個人の所有ではなく会社所有とする。担保提供や契約のため、経営者個人の都合による売却等が制限されている場合は、会社が経営者個人に適切な額の賃料を支払う。

    ・自宅兼店舗など明確な分離が困難な場合においても、会社は経営者個人に適切な額の賃料を支払う。

    ・会社が経営者個人に対して、事業上必要のない貸付けをしない。

    ・経営者の個人的な飲食費等の支出費を会社の経費にしない。

    ・役員報酬や配当金などは、社会通念上適切な範囲を超えないものとする。

     「社会通念上適切な範囲」とは、法人の規模、事業内容、収益力等によって異なってくるため、必要に応じて顧問税理士等の外部専門家による検証結果を踏まえ、債権者である金融機関が個別に判断する。

    ・ 上記のような対応を確保・継続する手段として「会計参与」の設置など社内管理体制の整備が望まれる。

    ・「中小企業の会計に関する基本要領」等に基づく信頼性のある決算書を作成する。

    ・以上の対応状況は、必要に応じて顧問税理士等の外部専門家により検証が実施しされ、その結果を金融機関に開示する。

  2. 「会社の財務基盤を強化すること」

    経営者個人の資産に頼るのではなく、会社自体の資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る財務状況が期待されており、例えば、以下のような状況が想定されます。

    ・業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること。

    ・業績はやや不安定であるものの、業績の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で将来的に借入金全額の返済が可能と判断し得ること。

    ・内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入金を順調に返済しうるだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと。

  3. 「財務状況の正確な把握、適時適切な情報の開示によって経営の透明性を確保すること」

    金融機関からの求めに応じて、融資判断に必要な以下の情報の開示と説明を行う。

    ・貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、これら決算書上の各勘定科目明細も提出する。

    ・年1回の決算報告はもちろん、試算表、資金繰り表も定期的に開示し説明する。

    ・資産負債の状況、事業計画や業績見通し等の情報開示と報告を行う。

    ・開示情報の信頼性向上の観点から、必要に応じて顧問税理士等の外部専門家による検証結果と合わせて開示する。

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