消費税の軽減税率・対象品目8案から3案に絞り込み

こんにちは。
相談役の池田茂雄です。

消費税の軽減税率について述べてみます。
平成26年4月1日から消費税が「5%」から「8%」に引き上げられたが、平成29年4月1日からは、現在の「8%」から「10%」に引き上げられることがすでに決まっている。そのような中で「10%」への引き上げ時に、一部の商品について低い税率を適用する「消費税の軽減税率」を導入することについての検討がなされている。消費税は誰にも同じ税率が適用されるため、低所得者の負担感は相対的に大きくなる。生活必需品に軽減税率を適用すれば、低所得者への対策になるとの声が公明党を中心に強くあり、約1年前に「対象品目8案」が政府与党から公表されていた。

 今回、軽減税率の対象品目について、前回の「8案」から「3案」に絞り込んだ案が政府与党より公表された。その3案とは次のとおりである。
   (1 案) 酒以外の飲食料品  (減税率1%当りの税収減) 6千3百億円
   (2 案) 生鮮食品      (      〃     )  1千8百億円
   (3 案) 精米のみ       (      〃     )  2百億円

この軽減税率の導入には、事業者サイドでの会計システムの開発などの準備期間が必要なため、今年秋頃までには結論を出す必要がある。軽減税率をめぐっては、従来から中小企業を中心とした事業者の事務負担増への対応が大きな課題となっている。又、例えば、生鮮食品といっても線引きの基準の難しさが指摘されるなど問題も多い。

そのような中で、「日本税理士会連合会」は、「平成26年7月24日(木)・日本経済新聞」に次のような意見表明を行った。

「消費税の単一税率維持を提言し、次の理由により軽減税率制度は導入すべきではありません」
① 軽減税率により税収が減少すると財政再建が損なわれることとなり、税収を補てんするために、標準税率をさらに引き上げるか、社会保障給付を抑制等することが必要となります。
② 軽減税率による税収減収額のうち、低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額は限定的であり、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となり、低所得者に対する負担軽減策としてはきわめて効率の悪い制度です。
③ 軽減税率の適用範囲を合理的に設定することはきわめて困難(特に、軽減税率対象品目から高級食材・嗜好品を除く場合など)であるとともに、その適用の判断に際して、納税義務者の事務が複雑となり、徴税コスト等も増大します。
④ ヨーロッパ諸国において軽減税率の適用に関する訴訟が非常に多いことが指摘されています。軽減税率の適用範囲の是否認を巡り、わが国においても税務訴訟等が増加し、社会的コストの増大を招くと予想されます。
⑤ インボイス制度の導入(別途のインボイスを発行する場合と、請求書等の書類に標準税率と軽減税率に係る必要項目を追加的に記載する場合等が考えられます。)が必要となり、納税義務者の事務負担が増大します。特に、二段階での税率引き上げに旧税率の経過措置が加わり、さらに軽減税率が導入されると、実務上混乱が生じることは避けられません。
⑥ 軽減税率が導入された場合、現行の簡易課税制度を合理的な制度として存続させようとすると、事業区分の細分化等が必要となり、複雑な課税制度となってしまいます。

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